アライナー矯正への期待とリスク

アライナー矯正への期待とリスク

近年の歯科で最も期待を集めているのがアライナー矯正だろう。「老舗」である『インビザライン』(アラインテクノロジー)の導入コースには、多い時で毎年1,000人もの開業医が参加したとされる。デジタルツールが主となるため、長年の臨床勘や経験値がなくても参入できる強みがあるが、だからこその限界も指摘されている。口腔内スキャナ(S T L)とCT(DICOM)のデータをもとに、専用のアプリケーションでマウスピースを設計する際、顎の可動域をはるかに超えた設計も理論的には可能なため、生理的に無理な圧がかかって顎関節障害、歯根吸収などを招くリスクもあるからだ。

また、アライナー矯正は3Dプリンターで装置を作るため、チェアサイドでの微調整が難しいのも難点の一つ。アライナー矯正は術者の技量に左右されにくいというのは誤解かもしれない。

アライナー矯正の2つの流れ

数あるアライナー矯正のシステムは、①適応範囲が広い分、価格が高く歯科医師へ の要求(セミナー受講など)も多いものと、②適応範囲が限定されている分、価格が 安く導入しやすいものに二極化しつつある。日本では、①の代表格である『インビザライン』を採用している歯科医師が多いが、これには、適応範囲の広さ、実績があり安心という点の他、価格の高さそのものが魅力になっている面も見逃せない。患者さんに請求する価格が高い分、医院側の収入単 価も多くなる構造になっているためだ。一方で、新興アライナー矯正の多くは、前歯部の歯列不正で、咬合に大きく関わらない症例に対象を限定し、予めトラブル発生のリスクを回避している傾向があるのが特徴だが、「だから安全」とは言いにくい面もある。適応判断の指標は、それぞれの企業がサポートするものの、「これは前歯部だけで 咬合に関わらない」といった判断の最終的な責任は歯科医師にあるためだ。

「DIY歯科」に見る切実なニーズ

「DIY歯科」がイギリスやアメリカなどで、一種の社会問題となっている。名前の通り自分で歯科治療を行ってしまうもので、ネットやドラッグストアでホワイトニングや虫歯治療ができるキットが販売されている。中には、ケガや感染のリスクがあるとして歯科医師会などが注意喚起している例もある。アライナー矯正をセルフでできる「DIY歯科」もある。シリコンを使って口腔内を型 取りしてスキャン代行サービス店経由で専門業者にデータを送ると、数段階分のアライナーが郵送で送られてくる。歯科医院も歯科技工所も介さないので、簡単で安価だが、当然ながら事故やトラブルも絶えない。

逆に言えば、このような方法でも、リスク承知で希望する人があとを絶たない事実 から、歯列矯正への切実なニーズがあると見ることもできる。そうした歯科口腔の美的な悩みにどう応えるかが問われている。

DIY歯科

DIY歯科は、通院不要、オンラインで自分専用の矯正マウスピースをオーダーできるサービス。ニューヨーク市場で上場している企業もあり、市場からの期待値の高さも伺える。それゆえ、安全性に疑問符がつきそうな多数の企業が同様のサービスを展開している。

 

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歯科業界唯一の週刊発行媒体「日本歯科新聞」をはじめ、医院経営に特化した「アポロニア21」の出版など、長い歴史と経験を誇る日本歯科新聞社。アポロニア編集長を務める水谷惟紗久(みずたにいさく)氏に協力を仰ぎこの連載が実現しました。
水谷編集長並びに日本歯科新聞社は、忖度しないメディアとして正しい情報を素早く、わかりやすく読者提供しています。記者によるインタビューや取材記事が中心のため、どの媒体よりも情報を掘り下げ展開されているのが特徴です。今後、ミュゼホワイトニングでもこのニュースレターを皮切りに、歯科医院の未来を見据え、「患者さまから長く支持される医院づくり」をテーマに医院経営に有益な情報を発信していきます。

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