日本の歯科医院の数に思うこと

歯科医院の現状

日本の歯科医院はコンビニよりも多いとよく言われるが、地域によって状況が大きく異なる。18世紀の歯科の黎明期以来、歯科医院は都市部に遍在し、特に、通いやすい駅チカに小規模医院が集中する傾向にある。そのため、都心部では個人経営の歯科医院が乱立している一方、郊外の住宅地では、大型法人の歯科医院に広い世代の患者が集まっている。

東京では区によって、人口約600人に対し歯科医院1軒にも及ぶが、地方では約2,500人に1軒の歯科医院しかないとの比較もある。コロナの影響で、こういった状況も変化していく可能性がある。テレワークの導入で職場と自宅の往復が減り、郊外の医院で患者増につながった例も見られる。大都市圏での医院経営環境が、さらに厳しくなっているのは事実のようだ。

日本と海外の来院率の違い

海外の歯科医師数(歯科医院数ではない)を見てみると、「歯科医療従事者の社会的地位が高い」と宣伝されるアメリカや、「予防歯科先進国」とされるスウェーデンでは人口当たりの歯科医師数は、日本と同じ10万人対77人ほど(2015年)。日本だけ突出して歯科医師数が多いわけではない。

しかも、日本は患者あたりの歯科受診頻度も諸外国に比べて多いため、「歯科患者」というパイ自体はそんなに小さくはない。これは、保険制度上、一つの症例で何度も受診させるためでもあるが、重症化予防を目的とする定期受診が政策誘導されてきた成果でもあるだろう。

ちなみに、スウェーデンでの未成年の来院率は90%を超えるとされるが、政府による助成が減る大人の予防目的の定期来院率は40%ほどしかないとするデータ(Special Eurobarometer 330、2010年)がある。

新たな「歯科需要」の拡大

今後、歯科医院の数は歯科医師の平均年齢からみて減少傾向をたどると見られている。従来の歯科医療の役割である、むし歯治療や入れ歯の設計だけに限定すれば「多すぎた歯科医院数が適正に戻る」と言えなくもない。

しかし、定期管理が定着し、フレイルなど口腔機能の低下に対応した分野も発展しつつあり、歯科需要が質的に高度化するとともに量的にも拡大しているため、これまで考えられてきた「適正数」では、歯科医師不足が深刻化する懸念もある。

さらに、全く病気のない人への完全な予防は保険適用外だが、企業の福利厚生事業として、あるいはホワイトニングや矯正などと組み合わせたサービスとしての発展も期待されている

 

 

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歯科業界唯一の週刊発行媒体「日本歯科新聞」をはじめ、医院経営に特化した「アポロニア21」の出版など、長い歴史と経験を誇る日本歯科新聞社。アポロニア編集長を務める水谷惟紗久(みずたにいさく)氏に協力を仰ぎこの連載が実現しました。
水谷編集長並びに日本歯科新聞社は、忖度しないメディアとして正しい情報を素早く、わかりやすく読者提供しています。記者によるインタビューや取材記事が中心のため、どの媒体よりも情報を掘り下げ展開されているのが特徴です。今後、ミュゼホワイトニングでもこのニュースレターを皮切りに、歯科医院の未来を見据え、「患者さまから長く支持される医院づくり」をテーマに医院経営に有益な情報を発信していきます。

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