保険の範囲が広い日本
日本は、他の先進諸国と比べて保険が利く範囲が広い。“銀歯は悪い”ともいわれているが、貴金属を贅沢に配合し、驚きの高付加価値治療だ(外国からは羨まれてはいないが…)。そもそも、成人の歯科治療に手厚い公的給付がなされてきたこと自体、国際的には珍しいとされている。
「保険診療は、貧困者向けの最低限の医療保障」と考えている歯科医師が少なくないが、日本の場合、憲法上、生存権(25条)ではなく幸福追求権(13条)が、保険制度の根拠と考えられ、質の高い医療水準を担保してきた。
逆に、旧大英帝国圏やアメリカでは、公的医療保障を最低限の水準に留めるべきとする傾向がある。これには救貧法(17世紀)からの歴史的背景があり、日本と優劣を比較するのは難しい。
歯科給付の国際的な広がり
2019年、国際的な影響力のある医学雑誌『ランセット』が歯科口腔に関する特集を掲載。「歯科疾患は多くの人がかかる病気で、社会の損失も大きい」として、各国政府が歯科給付の拡充に取り組むべきだと訴えた。そのため、今後、歯科医療への公的給付が広げられる可能性も高い。
しかし、公的給付されると、その分野の臨床成績が下がるジレンマが指摘されているのも事実だ。保険適用となった結果、これまで専門医しか手掛けなかった症例を一般歯科医(GP)も行うようになり、成功率が下がった例もある。
地域性・特性に合った技術
一般開業医が不慣れな先進医療を実施することを、社会はそれほど求めていないのではないか。一方、保険外診療の分野の開拓が医院経営を安定させることも事実だ。
地域性や自分の特性に合った技術を集中的に高めて臨床成績と効率性を上げ(主に保険診療の分野)、同時に、極端に高度な技術を要しない分野での付加価値を上げる(主に自費診療の分野)という戦略からすれば、矯正やホワイトニングなどが一般開業医が開拓すべき分野かもしれない。
業界をリードする歯科情報のパイオニア、日本歯科新聞社の連載スタート!
歯科業界唯一の週刊発行媒体「日本歯科新聞」をはじめ、医院経営に特化した「アポロニア21」の出版など、長い歴史と経験を誇る日本歯科新聞社。アポロニア編集長を務める水谷惟紗久(みずたにいさく)氏に協力を仰ぎこの連載が実現しました。
水谷編集長並びに日本歯科新聞社は、忖度しないメディアとして正しい情報を素早く、わかりやすく読者提供しています。記者によるインタビューや取材記事が中心のため、どの媒体よりも情報を掘り下げ展開されているのが特徴です。今後、ミュゼホワイトニングでもこのニュースレターを皮切りに、歯科医院の未来を見据え、「患者さまから長く支持される医院づくり」をテーマに医院経営に有益な情報を発信していきます。