到達度を明示する
これまで、歯科医師、歯科衛生士、歯科助手といった職掌での区分しかなかった歯科界だが、一部の大型医院や分院展開する法人では、主任、チーフ、マネージャーなどの役職を通じた教育訓練、キャリアアップの制度を導入するようになってきた。これらの制度は、既存のスタッフにはキャリアアップに向けた「やる気」をもたらし、求職者には組織的な育成をしてくれる「安心」をもたらす。
例えば、「いつまでに」「○○ができるようになる」が明示されているだけで、目標やキャリアプランが明確になる。身近に目指すべき先輩がいれば未来イメージが沸きやすくなり、成長の速度も上がる。成長段階に合わせた育成マニュアルがあると、到達度に合わせての指導、課題把握や振り返りも容易になるので、育成する側の負担も軽減できる。
また、キャリアアップモデルと併せて、ある程度給与とリンクする形で肩書きを用意し名刺を作成するところもある。組織人としての自覚を促す効果が期待できるという。
経営と診療の分離による効果
本来、技術職である歯科医師がマネジメントまで責任を持つのを「時代遅れ」と見る国もある。中国は、受付事務スタッフだった人が出資者と契約して経営を担っている場合が多い。アメリカでは、「コンサルタント」の一部が保険会社と契約してマネジメントを統括。歯科医師を雇用する形態の歯科医院も出てきた。
歯科医師が経営すると新規治療などの導入を優先する傾向にあるが、経営と診療を分離することで費用対効果が投資の優先順位を決めるようになる。パラ・デンタル・スタッフから管理職への登用により、経営と診療の分離に近い効果が期待できるかもしれない。歯科衛生士が経営管理部門で活躍することも想定されるということだ。
歯科衛生士のキャリアモデル
歯科衛生士のキャリアモデルは多様化しつつある。教育、経営管理などの部門で活躍することもできるし、インプラントのアシストなど専門性の高い診療補助のキャリアを積んだり、在宅訪問診療で多職種連携の中に飛び込んだり、と様々だ。共通性、再現性のあるマニュアルが整備されれば、これらのスキルが、別の法人に転職しても生かせることになる。現在、全国的に歯科衛生士の争奪戦となっているが、日本の歯科医療にとって共通の人的資源だという側面にも注目すべきだろう。
反対に、同じ医院で長く働くことで、担当している患者さまの変化とともにスキルアップするキャリアモデルも「あり」だ。どんなモデルを選択するにしても、目の前の仕事に真剣に向き合えばスキルもキャリアも上がっていく…。そういう職場環境が望まれるのではないか。
業界をリードする歯科情報のパイオニア、日本歯科新聞社の連載スタート!
歯科業界唯一の週刊発行媒体「日本歯科新聞」をはじめ、医院経営に特化した「アポロニア21」の出版など、長い歴史と経験を誇る日本歯科新聞社。アポロニア編集長を務める水谷惟紗久(みずたにいさく)氏に協力を仰ぎこの連載が実現しました。
水谷編集長並びに日本歯科新聞社は、忖度しないメディアとして正しい情報を素早く、わかりやすく読者提供しています。記者によるインタビューや取材記事が中心のため、どの媒体よりも情報を掘り下げ展開されているのが特徴です。今後、ミュゼホワイトニングでもこのニュースレターを皮切りに、歯科医院の未来を見据え、「患者さまから長く支持される医院づくり」をテーマに医院経営に有益な情報を発信していきます。