コロナ禍からの脱却

コロナ禍の医院経営への影響

新型コロナウイルスの蔓延は、歯科医療現場にも多大な影響をもたらした。2月頃から予約のキャンセル増加や感染を懸念したスタッフの休職、さらには一時休診を決断した医院も出た。

各種統計では、患者減が最も大きかったのは4月だが、グローブ、消毒液などが入手困難で診療枠を大幅に縮小した医院も多かった。都心部では、テレワークの影響で昼間人口が減り、患者数にも影響が出たケースも少なくない。

逆に、郊外の大型歯科医院で予防管理型の診療をしているところでは、キャンセルが抑えられた上に、都心部の医院からの短期的な転院も見られ、中には「患者数が増えた」というケースもある。

ただし全体的には、一度の予約でできるだけの処置をするようになったこと、予約の合間に感染対策を行う必要があったことから、6月まではレセプト枚数が減少した医院が多かったが、レセプト当たりの点数は増加傾向と見られている。

キャンセルではなく予約変更に

統計によっては「4月に8割以上の収入減となった」という歯科医院も少なくない。多くは自主休診によるものだと考えられるが、周辺には診療を継続していた医院もあり、転院した患者も多かった。

3月、4月に一時休診に踏み切った歯科医院にとって、都市部でも歯科受診が回復した6月以降に、再開のタイミングが頭の痛い問題になった。

政府や専門学会から「これは危険ライン」「ここまで対策したら安心」などの指針を明確に示されないまま休診に踏み切った医院では、スタッフや患者に「安心だから再開」と根拠を示せなかったのだ。

休診していない医院でも、キャンセルが相次いだところは多かったが、ある歯科医院では緊急事態宣言に伴うキャンセルの電話に対して、「また変更しても構わないから、キャンセルせず変更にした方が良い」と、できるだけキャンセルではなく変更を促した。これにより4月の予約分を5月以降に変更するだけで総数は確保できたという。

このような対応ができたのは、その医院に十分な感染予防対策をしているという自負があり、コロナ禍でも診療の継続が患者利益になるという信念があったためだろう。患者側にも定期受診への動機付けができていたことも、患者数の安定につながったと言える。

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歯科業界唯一の週刊発行媒体「日本歯科新聞」をはじめ、医院経営に特化した「アポロニア21」の出版など、長い歴史と経験を誇る日本歯科新聞社。アポロニア編集長を務める水谷惟紗久(みずたにいさく)氏に協力を仰ぎこの連載が実現しました。
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